fc2ブログ

時事評論

イノベーションとは何か(1)

 ←石の鑑賞と評価 →イノベーションとは何か(2)
ガイアの夜明け 20120911日本の閉塞状況を脱出する番組「ガイアの夜明け」
日本の閉塞状況を新しいソフトで脱けだそうとする起業紹介番組「ガイアの夜明け」


イノベーションとは何か

このような表現をすれば、大袈裟で不遜な感じがするかもしれない。

わたしたち日本人は、政治・経済について素人で衆愚的であるが故にいつも裏切られ失望ばかりしてきた。
政権担当を選ぶ総選挙から地方の選挙に至るまで、候補者が決まって口にすることばがある。マニフェスト:公約の筆頭に来るのが、「新しい(刷新的、革新的)日本」である。
英語に意訳すれば”Innovative Japan”であろう。

ところが、公約不履行や失策により、数年も経たないうちに政権交代が生じてしまう。
国民は、このような現象に慣れているので、期待感もなく、また同じことの繰り返しか、という気持ちで閉塞感に陥ってしまう。そして、改善どころか改悪のツケは国民に重くのしかかる。

この世界的不況の中では、どこの國も同じような状況かもしれないが、ほとんどの政党が公約として「Innovation:刷新、斬新;イノベーション」を訴えながら、なぜそれができないのか?
この慢性的悪寒のように纏わり付く病理的な閉塞感を退治する方法はないのだろうか?
まあ、これが「世の不条理」というものだ、と言われれば返す言葉はなくなるが。

しかしながら、あきらめてはいけない。どこかに希望の突破口があるはずだ。
イノベーションを阻む要因や推進する方策について探ってみた。

これまで、日本は、「ものづくり」を中心に繁栄してきた。
田中角栄の列島改造論が高度経済成長につながった。
道路や建物づくり(劣化するハードウェア)で内需拡大はしたが、この時代はすでに終わった。
ところが、時代(パラダイム)は一変して、ものをつくればつくるほど、市場にあふれて売れずに貧乏になる。というような悪循環がスーパーデフレ現象を引き起こしている。

「もの(ハードウェア)づくり」だけではなく「斬新なソフトウェアづくり」を志向しない限り、この閉塞感や崖っぷち状況を脱出できないのではないか。
日本人の国民性である、努力や勤勉を否定するわけではないが、「努力や勤勉」だけでは埒が明かない、突破できない時代が来ている、ということだ。

汗水流して、努力が報われる時代も終わった。虚構のマネーを操作する株や投資で儲けているのは、選ばれた一部の頭脳的人間である。善し悪しは別として、汗水とは無縁のアイデア勝負である。

ドラえもんの、いつどこでも役に立つ発明品のように、地球上のどこにおいても、現地に役立ち、現地で生産し、現地を潤し、現地に歓迎され、共に栄えるアイデア商品。
このインターネット時代に、富の分配、共存共栄、知的財産の共有を目標としない、ひとりよがりの閉鎖的な事業・国家が繁栄することはまずありえない。
こんな「ソフト+ものづくり」の実践例を「ガイアの夜明け」で見てそうおもった。

わたしの能力は限られているため、日本のこの筋の専門家を捜してみたが見つからない。
紙面の出版書籍は、今日では1年も経てば、このネット時代にはあまり役には立たない。
そして、特殊な場合を除き何十ページも深読みする人もいない。概説や要約で事足りる時代になった。

そこで、米国の研究者の論文の日本語訳を紹介することにする。



What Is Innovation?

David Nordfors, Co-founder and Executive Director, VINNOVA - Stanford Research Center of Innovation Journalism
Innovation is invention plus introduction, and it is increasingly seen as crucial for economies and governments alike.・・・・・あとは日本語訳を


デビッド・ノードフォース

イノベーションとは、発明に導入をプラスしたものであり、経済だけでなく政府にとっても極めて重要であるという認識がますます高まっている。拡大する経済は、もはや同じ製品をさらに生産せず、むしろ常に付加価値のある新しい製品を生産する。デビッド・ノードフォースは、スタンフォード大学の「VINNOVA-スタンフォード・イノベーション・ジャーナリズム研究センター」の共同設立者であり、同研究所のエグゼグティブ・ディレクターでもある。

今日、イノベーションは、経済成長の最も重要な牽引力である。イノベーションは、経済的・知的自由を持つ文化の中で、起業家精神を後押しする社会的風土に依拠している。賢明な政策立案者は、この種の「イノベーション・エコシステム」を促進する必要性を理解している。

発明は、何か新しいものを作り出すことである。イノベーションは、それに留まらず、何か新しいものを導入することである。イノベーションとは、発明に導入をプラスしたものである。何か新しいものを導入することは簡単ではない。これは、自分の職場をどうすれば改善できるかについて聡明なアイデアがひらめいたことのある人ならば、誰でも分かるだろう。人々は進歩したいと言いながら、変化に抵抗する。
地域社会や組織は、そこに所属する人々以上に変化に抵抗することが多い。ある組織に属する個人全員が変化を望んだとしても、その組織の文化が変化を許さないこともある。


イノベーションを起こすということは、技であり、芸である。イノベーションがどのようにして起こるかを理解するのは、科学である。イノベーションは、科学と技術に深く根ざしているが、人間の心理と文化にも同じように深く根ざしている。

私たちは、以前よりもよきイノベーター(変革者)になりつつあり、その結果生み出された製品やサービス、プロセスは、地球上のより広い地域で、市民の生活にいっそう重要な役割を果たすようになってきている。世界の大部分は、すでにイノベーション経済に移行しており、残りの国や地域も急いで後を追っている。

従来の生産志向型経済では、成長は、同じものをさらに生産することによってもたらされる。富とは、前年との比較で、より多くの小麦を育て、より多くの従来型の家を建て、より多くの従来型工場を開設することだとされてきた。イノベーション経済における成長とは、前年と比べて、より多くの新しいことをすることを意味する。それは、世界中の人々の日常生活の中で、はっきりと目に見える根本的な変化である。


wwwj-ejournals-innovation1a.jpg
世界の人口の半分を超える人々が携帯電話を使用している。このマリの少年は、自動車用バッテリーで自分の携帯電話を充電している。


短期的な成功を目指す


携帯電話の急速な普及は、イノベーションがどのように機能し、世界の文化をどのように変えるかを示している。手持ち式携帯電話による通話が初めて行われたのは、1973年4月であった。そのわずか10年後、スウェーデンとフィンランドで、最初の携帯電話網が開通した。国際電気通信連合によると、2008年末までに、世界の携帯電話加入件数は、40億を超えた。これは、なんと世界の全人口の半分を超える数字である。識字能力と比較してみるがよい。書く技術は、何千年も前に発明されたが、世界の識字率が50%を超えたのは、ほんの数十年前のことである。携帯電話は、識字能力に比べて、実に100倍もの速さで普及したことになる。

どうすればこのような急速な変化が起こるのだろうか。それを解く鍵は、同じものをさらに生産することに焦点を当てるのではなく、イノベーションに焦点を当てることにある。

携帯電話会社がライバル同士、次のイノベーションでリードしたいと常に競い合っていなければ、携帯電話はいまだに富裕層のためだけの高価で、格好の悪い、やたらバッテリーを消費する装置のままであったろう。もしそうだったならば、今日、多くの人々は携帯電話を持っていなかっただろう。

次の大きなイノベーションに向けての競争は、従来型の企業構造を破壊しつつある。成功している企業は、もはや研究とビジネス開発を切り離すことはない。厳しい状況に置かれている企業は、経営計画によって裏付けされていない、費用のかかる研究を避けたがる。収益に寄与しない技術を開発するために多額の金を投資することは、会社の倒産にもつながりかねない。

技術開発とビジネスは、一緒に行われる必要がある。今日、技術部門と営業部門のスタッフは、互いに協力して仕事を進めている。従来の分析的思考――各専門家グループがそれぞれの枠内で考えた結果を報告書の形で他の人々に送る――は、「デザイン思考」、すなわち、ユーザーのニーズを満たし、ビジネスの成功を推進するために、異なるタイプの専門家が交わり、共感、独創性、合理性を結集するという考え方に取って代わられる可能性がある。

この傾向は情報技術の分野でますます強まっている。現在のコンピューター、携帯電話、その他の製品が市場に出回っているのは、1年か2年の間と見られており、新しい製品がすぐにそれに取って代わる。これは、食品や製紙分野のような、より長い寿命を持つ伝統的製品でさえ例外ではない。コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーの研究者によると、今日、製品の寿命は、40年前の3分の1である。これもまた、「同じものをさらに生産する」経済から「何か新しいものを導入する」経済への転換を反映している。


ビジョンから現実へ


人々は、イノベーションを科学技術の進歩と結び付けて考えることが多いが、特定の革新的な技術や手法がさまざまな分野の改善を促してきたことも事実である。例えば、マイクロローン(小口融資)は、発展途上国の人々が低コストの商売や会社を設立する新しい方法、新しい学習方法を始めることを可能にした。

「イノベーション」という言葉は、例えば、新しい装置のような目新しいものを指して言うこともあるが、その目新しいものを生み出したプロセスを指して言うこともある。これは、委託研究機関である「SRIインターナショナル」のカーティス・カールソンとビル・ウィルモットが提言する「市場での新しい顧客価値の創造・提供プロセス」のように、主に商業的なものかもしれないし、完全もしくは部分的に社会的ニーズに駆り立てられてのものかもしれない。社会的イノベーションと商業的イノベーションは、互いを後押しし合う場合が多い。マイクロローンや、非営利コミュニティーが作成したオープンソースのフリーソフト―例えば、LinuxのOSやFirefoxのインターネット・ブラウザー―は、その良い例である。

多くの人は、イノベーションを世界の富める国や地域と結び付けて考えるが、今日では、低コストのイノベーションが増えてきていることにより、イノベーション経済は、世界のほとんどすべての地域への拡大が可能になった。インターネットで新たに革新的なサービスを創出するには、ほとんど資金を必要としない。スタンフォード大学の学生たちは、ごくわずかな資金でヤフーとグーグルを立ち上げた。

これらの会社が大きな投資を得たのは、事業がすでに軌道に乗ってからである。インターネットサービスのような特定の分野では、革新的な会社を設立するための敷居は低い。基本的に、このような会社を興すための資金は、世界中の多くの場所に十分にある。

インターネットが普及し、通信が進歩するにつれ、世界市場もまたより敏感に反応するようになってきている。伝統的な社会では、そこに暮らす人々に、それまでの古い道具とやり方を捨て、新しい道具とやり方を導入するよう促すことが、これまでより容易になっている。画期的で安価な給水ポンプ、伝統的農業を改善する費用対効果に優れた新しい方法、村や小集落の病人のケアを組織的に行う新しい方法―これらはすべて、あまりコストをかけずに行うことが可能な、将来性の高いイノベーションの重要分野である。

カリフォルニア州のシリコンバレーを考えてみよう。シリコンバレーは、現代で最も成功しているイノベーション・エコシステムであり、それは多くの技術的あるいはその他の分野のイノベーションの間のアイデアの相互交流の上に成り立っているという側面が大きい。

シリコンバレーで、ダグ・エンゲルバートは1968年、現代のパソコンシステムの最初の原型のデモンストレーションを行った。このデモは、一般の人々が初めて目にするコンピューターマウスを使って行われ、対話式テキスト、ビデオ会議、電話会議、電子メール、ハイパーテキストも紹介された(このデモの様子は、Youtubeで見ることができる。the mother of all demosを検索)。

エンゲルバートは、このデモを「新しいパーソナルコンピューターシステム」とは呼ばなかった。代わりに、「人間の知性を増強するためのリサーチセンター」という奇妙なタイトルをつけた。エンゲルバートが考案した装置は、より賢いコンピューターを作るためのものではなく、より賢い人間を作るためのものだった。

さらに、これらのパソコンは、人々が協力して問題を解くことができるよう互いに接続される予定だった。コンピューターをネットワークで結ばない場合に比べ、はるかに難しい問題を解決できる集団的知性を形成するためであった。それは、当時、突拍子もない考えだったため、理解できる人はほとんどいなかった。インターネット、小型のパソコンである携帯電話、そしてソーシャルネットワーク用のアプリケーションの登場により、今日、そのビジョンは現実のものとなった。

To be continued


スポンサーサイト






もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 
もくじ  3kaku_s_L.png 愛娘 Erika
もくじ  3kaku_s_L.png やきもの
もくじ  3kaku_s_L.png 余白の人生
もくじ  3kaku_s_L.png 忘れえぬ光景
もくじ  3kaku_s_L.png 文学・芸術
もくじ  3kaku_s_L.png 雑学曼陀羅
もくじ  3kaku_s_L.png 時事評論
もくじ  3kaku_s_L.png 教育評論
もくじ  3kaku_s_L.png 書画・骨董
もくじ  3kaku_s_L.png 

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【石の鑑賞と評価】へ
  • 【イノベーションとは何か(2)】へ