余白の人生

志野と色鍋島

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 志野と色鍋島


zh 志野茶碗 国宝 銘 『卯花墻(うのはながき)』 

 「国宝卯の花墻への幻想」 龍村 謙(国宝審査委員) 解説

土は懐かしい。常に最初は冷ややかに、やがてほのかに体温がうつって、むちむちと、柔らかく温かい。こね、ひねるにしたがって、掌らを通じて土は、素直に造形されてゆくのだが、自分の計画通りにはならない。土の持つ性格と理論が、いつもしっかりとしていて、作る側の誤謬を指摘する。

土をいじめてはいけない。乾きすぎると、土は老人のようにしわだらけになって、ぼろぼろと死んでゆく。土に水をやるとつやつやするが、湿しすぎると、ずるずる溶けて、泥水になってしまう。土の中へ中へと、湿しをいれてゆくと、土の全身が若々しく、つやつ
やして、いつでも造形に応じてくれる。親指のあとの深い穴、板の木目のついた面、糸切りの美しい年輪、そういう美しいものが、瞬間に出来上がり、瞬間に消えてゆく。しかし我々は、そのどれも捉えることができない。蒼空の雲のように、美しいものが、手の中で消えてゆく。

土自身は太古から、土自身である。
陶磁の造形は、その土自身の性格のうけつぎであり、温存である。ノンコウの繊細な注意力が、精密に削っても、土はいやだとはいわない。
光悦が、強い断定を造型しても、つちは、自らの特性が活躍した形として受取り、笑っている。
乾山の手の中でも、道八の手の中でも、また仁清のロクロの上でも、土は土自身である。
そして、常に微妙に美しい。
この美しさを捉えることが出来れば、名人なのだろう。

いや土のみではない。原料の硅石や、銅や鉄も同じである。ごうごうと唸る炎の中で、溶釉は自らの性質にしたがって、真っ赤な錬獄の中の鬼となっている。メフィストフェレスに似た、あらゆる宇宙の原素は、燃えたぎり、狂い、怒り、やがて、静かに自分の形どおり、色どほりに結晶して、陶器製形の上に、その安住地を見出す。

かまから出て空気にふれると、あらゆる原素は寒い。「いたい」と、うめき出す。貫入が入る。しかし姿はかえない。ヒビも、自然に面白くはいり、うまく成功すると、色々の上ぐすりは、鍾乳洞のような量感をそなえたまま、安定する。たとえば、この国宝の志野茶碗がそれで、土のほのかな赤みが、白い長石をすいてみえ、かいらぎに似た形体が、大自然の山嶽を想像せしめる。その中に、微妙な絵付けが、うすく透けて、紫色にみえ、「卯の花墻」と呼ばれる、あのほのかに、爽やかな薫りがただよう。

久々、国宝審査のみぎりにお目にかかったこの銘碗は、ぐいっと、上半分と下半分の、二つのちがった形が、あいよって形成される形体や、平底の大胆さ、さらに雪崩のように強烈な釉薬の力、それは何ものも及ばない、自然力の結集である。またその厚み、その姿、その品格、そこには光悦も及ばぬ人工の、天然に対する配合が存在する。この大自然との合一こそ、名工の境涯なのであろう。

 平凡社「陶器全集」4志野(昭和34年6月30日初版第1刷)付録/月報13より引用



zh 志野茶碗 国宝 銘 振袖


退屈を紛らわすために、戦後昭和の陶磁器を落札してみた。


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志野の魅力は、数寄者の収蔵品・蒐集品で見聞してきた。


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他の古陶磁と比べて、時代付け・古色に経年の変化が見られないことに気づいた。
特に、判定の要である高台の作り・色合いに変化があまりない。
これでは、素人の時代鑑定は困難だろう。


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まったりと分厚く流した白い釉薬と紅色のコントラストが純潔でいて艶めかしい。
鼠志野は、芥川龍之介がこよなく愛した。


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色鍋島は、お庭焼・鍋島藩の御用窯で、柿右衛門手よりもはるかに品格がある。


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匠が手間暇かけて手作りで作品に心血を注ぎ完成したため、数も稀少で高価である。
参考までに、この花入れを製作した鍋島藩窯を継ぐ第一人者、市川光山 作の青海波吉祥文皿を掲載しておく。

以前は、中国古陶磁(萬歴赤絵・呉須赤絵・天啓赤絵など)以外はほとんど見向きもしなかったのだが、彩色のない陶磁器ばかりでは、不思議と淋しくなってきた。やはり赤土が近くなった老齢のなせる技だろうか。


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zh 色鍋島 市川光山 作の青海波吉祥文皿


柿右衛門様式は、当時はじめて柿の色と濁し手を世に出した功績は大きい。
海外輸出のため、現代の大量生産方式を取り入れ、分業による流れ作業であった。
したがって、匠の技が観られず、雅味・フォルムがなく、単調・退屈ですぐ飽きがくる。



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