忘れえぬ光景

夕焼け小焼けで

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2016 00 棚田の落日




 イシコロ還暦記念の随筆である。


 夕焼け小焼けで
   

 美しい夕焼けを見ると、なぜか心がなごむ。 目頭が熱くなることもある。
 日本には、落日を詠んだ歌や、夕焼けを描いた絵画が多い。

 落日には、万物の生命が象徴されている。西に沈む太陽は、翌日、また東から昇る。
それは生命は必ずよみがえる、季節も巡ってくるという「輪廻転生」の考え方と結びついているからだろうか。


 夕焼け小焼けで 日がくれて
 山のお寺の 鐘がなる
 お手てつないで みなかえろ
 からすといっしょに かえりましょう


 千年の日本人の美意識と心を、実にやさしい言葉で表現した、中村雨紅さんの詩である。

 夕方になって日が暮れたら、子供たちは家に帰りなさい。
 「帰るべきところに帰りなさい」という大人に対するメッセージでもあろう。

 五世紀中国、陶淵明の代表作『帰去来辞(かえりなんいざ)』を思い出す。
 田舎から「青雲の志」を抱いて都に出ていく。立身出世して県知事になる。
 しかし、ある時はっと気づく。帰るところに帰らなければならない。
 田舎に帰って悠然として自然と共に暮らす。
 この帰去来感情は、平安時代以降ずっと日本人の心の奥底に流れ続けている。

 そして最後「からすといっしょにかえりましょう」。
 かって、からすは子供のよき友であり、神仏の巫覡(ふげき)だった。
 帰るのは人間だけではない。鳥も動物もいっしょである。

 還暦を迎えたいま、この童謡が心に沁みる。

 人間中心の「人道主義」や「共生」には、自然の一部にすぎない人間が、自然の摂理を無視して、自然を征服できるという過信が見え隠れする。


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 ものが豊富にあることは、たいへん有り難いことであるが、不自由さを知っているから自由の喜びがわかる。
不幸に出くわしたから幸福のありがたさが身に染みる。

 豊かさとは、ものの有る無しよりも、ものに感動する心のあるなしに依存する。
教育という「魂の仕事」は偉大である。

 最後に、忘れがたき出逢いと、戦争のない平和な時代に恵まれたことを感謝し、生涯の歓びとしたい。



 
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