やきもの

「呼び継ぎ」

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s-2000 s 呼び継ぎ茶碗 銘「雷」 松永耳庵




 「呼び継ぎ」 残欠復元


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金継ぎ技法のひとつに「呼び継ぎ」という日本人独特の美意識があります。

古窯跡から発掘された陶片・残欠を寄せ集めて元の姿に成形して賞玩することです。

数百年前の古窯で生産された生活陶器・・甕(かめ)・壷(つぼ)・茶碗・皿類で窯キズやカケ・ワレなど商品にならない陶器・陶片類は、当時古窯跡の近くの“モノハラ:物原”(陶片を廃棄した場所)に棄てられていました。平安から鎌倉時代に中国から禅宗仏教が伝来し、併せて「禅の喫茶」も始まり、次第に喫茶も広まりました。


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室町時代になると「草庵の茶」が始まり、創始者 村田珠光(1422~1502、室町中期の禅僧)と「侘茶」の実践者 武野紹鴎(1502~1555、室町後期、堺の豪商)、そして桃山時代「茶の湯」の祖 千利休(1522~1591)に受け継がれ、侘茶は、中国伝来品のコピーであった日本の作陶を一変させ精神性の高い「茶の湯」の道具にしました。

当時の陶工たちは、良質な「土(原料用陶土)」と「薪(生成用燃料)」を求めて・・美濃・瀬戸・常滑・丹波・越前・信楽・備前・唐津などの山里に窯を移しながら移動していました。

窯も山の傾斜を利用した「登り窯」でしたので、移動していくうちに古い窯跡は朽ち果て所在すら分らなくなっていました。


2000 s 呼び継ぎ茶碗 鳴海織部


「茶の湯」は、江戸時代になると古田織部・小堀遠州・松平不昧に受け継がれていきました。
明治時代岡倉天心の「茶の本」により「茶の湯」の精神が再評価され、古陶・古窯の見直しも始まりました。
古陶・古窯の名品類や完品は大名物・名物と称され、銘が付けられて所有者の家宝として納まっていました。


明治・大正・昭和になると高麗・李朝時代の古い朝鮮陶器も注目され、数奇者(目利きの愛好家)の収集対象となりました。

そのような時代背景もあり、中国・朝鮮・日本各地に点在する古窯の調査が始まりました。
発見発掘された古窯の窯跡やモノハラから数多く出土した古い陶片が、役人の言う学術調査や文化財保護法など役所の都合で未だにコンテナに入れられたまま倉庫の奥に埋もれています。


2000 s 呼び継ぎ茶碗 初期伊万里


これでは、山里の土の下に埋もれていても、都会のコンクリート施設の中にあっても古窯の陶片が埋もれていることに変わりありません。
出光美術館(東京)では、小川富士夫が中国・日本の古窯跡で発掘した多くの陶片類を見ることができます。

愛知県陶磁器資料館(愛知県瀬戸市)には、猿投・美濃・瀬戸・常滑の古窯跡から発掘された古陶磁の陶片類が、広いフロアーいっぱいに展示されています。
私たちの公的財産ならそれくらいのことはしてもらいたいと思います。


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さて、「呼び継ぎ」についてですが、

① まず古窯の同じ窯跡・モノハラから出土した陶片を手に入れます。
② その陶片の中から、同じような絵柄・色合いのものを数枚選び出します。
③ 出来上がりをイメージしながら組み合わせ、電動カッターとグラインダーで整形します。
④ そして整形した陶片を組み合わせ、糊漆でつなぎ、刻苧(こくそ)・切粉(きりこ)・錆漆(さびうるし)の順できれいに継ぎ合わせます。
⑤下地が、きちんと固まったら呂漆を塗り乾いたら砥石(サンド・ペーパーなど)で磨き、また漆を塗り乾かし磨き‥を繰り返し、
⑥最後に金を蒔いて磨きあげ、新しい器に仕上げます。

これを「呼び継ぎ」と言い、完品にはない個性的で美しい‘オンリーワン’の陶器が、出来上がります。博多は、唐津に近いので今でも時どき、古唐津の陶片を手に入れることができます。
割れたり欠けたりした陶片を手の中で組み合わせながら、古唐津の陶工たちの感性と「新しい古唐津」の姿を想像するのも「呼び継ぎ」の楽しい作業の一つと思います。




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博識と誠実さで、日頃から信頼し、馴染みにしている骨董屋さんから、古窯発掘伝世品の、目の玉が飛び出るような高価な古斑唐津の「呼び継ぎ」ぐい吞みを見せてもらった。
おまけに撮影の許可までいただき記念撮影をしてきた。

高齢者になって、身体にあちこちガタが来て、手術をしてまともな体でおれなくなる現象は、まさしく「呼び継ぎ」の人生であり、修復された古陶磁にますます愛おしさと修復されてなお生き残ろうとする力強さを感じずにはいられなかった。

日本人独特の美意識と感性は、この「もののあわれ」から生まれたのだろう。
 


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