時事評論

「高齢者は働かないほうがトク」

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 「高齢者は働かないほうがトク」

 ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄

 2017/01/18



 イシコロコメント

 高齢者が働かなければ生活できない、ということは、若者の職を奪い労働意欲を削ぎ、その国の衰退を速めることにつながる。
老子の教えの通りで、単純なことだ。
 


 所得が高いと医療費の自己負担率が高い

 日本の医療保険制度では、自己負担率は、70歳未満が3割(義務教育就学前は2割)だが、70歳以上75歳未満の者は2割、75歳以上の者は1割となっている。ただし、所得が現役並みなら、3割になる(図表1参照)。

 ここで、「現役並み」とは、世帯内に課税所得の額が145万円以上の被保険者がいる場合だ。課税所得が145万円と言うと少ないように聞こえるが、年金の場合には控除額が大きいので、これは普通のことである。65歳以上の場合、公的年金年額が120~330万円であれば、控除額は120万円だ。したがって、公的年金以外に収入がなければ、公的年金額が265万円未満の場合には、課税所得は145万円未満になる。

 ここでも、所得が高いと課税されるのと同じ結果になるわけである(ここでの所得は、課税所得であるから、賃金だけではない)。

 所得が増えた場合に負担がどの程度増えるかは、医療費によって異なるので、一概には言えない。

 例として、75歳以上で年間医療費が100万円の場合を考えると、課税所得が145万円未満なら、自己負担は10万円で済む(これに加え、次項で述べる高額医療費の制度があるので、さらに減る)。しかし、145万円を超えた途端に自己負担が30万円に増える。これはかなり大きな負担増だ。


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 所得がなければ高額療養費制度で保護される

 自己負担に関しては、「高額療養費制度」がある。これは、月ごとの自己負担が限度額を超えた場合に、超えた金額を支給する制度だ(ただし、入院時の食費負担や差額ベッド代等は含まない)。

 例えば、100万円の医療費で、自己負担が30万円である場合、70歳未満で年収約370~770万円の人なら、21万2570円が高額療養費として支給されるので、実際の自己負担額は8万7430円で済む。

 70歳以上の場合には、1ヵ月の負担の上限額は、「一般」の場合に4万4400円、所得がゼロだと1万5000円でしかない。
 老人医療の無料化という制度は廃止されたが、それに近い状態だと考えることができる。


図表3は、年齢別の医療費と自己負担等の状況を示したものである。これから分かるように、高齢者の自己負担限度は低い。そして、所得が低ければ、きわめて低い。

 この図で見るように、1人当たり年間医療費は、70歳を超えると60万円を超え、90歳を超えると100万円を超える。それにもかかわらず、自己負担はこのように低いのだ。

 しかも、上限を決めるのは「所得」であるため、いかに巨額の資産を持っていようと、ほとんど自己負担なしに医療サービスを受けられる。

 例えば、75~79歳では、医療費が1人当たり年額76.1万円であるのに対し、「保険料および自己負担額」は13.5万円でしかない。自己負担は6.6万円と、医療費の8.7%でしかない。

 75歳以上の自己負担率は1割または3割となっているのだが、高額療養費制度の影響で実際にはこのように低くなっているのだ。


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 基準所得は前年度分なので「働いたら危険」ということも

 以上のような制度は、高齢者の受診率を高めている可能性がある。このため、この問題は、高齢者の医療費を膨張させるという観点から議論されることが多い。確かにその問題は重要だ。

 しかし、それだけではなく、高齢者が就労して所得を得ることに対して抑制的に働く効果があることにも注意したい。

 所得がなければ、もともと自己負担率が1割と低い上に、高額療養費制度があるので、医療についてはほぼ安全が確保されると言ってよい(差額ベッドなどを使わなければ)。これは働かないことの特権だ(すでに述べたように、収入が公的年金だけであれば、公的年金の収入があっても、この特権を享受できる)。

 しかし働けばこの特権は失われる。

 だから、ここでも、「働かないほうがトク」という制度になっている。



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