忘れえぬ光景

「しあわせ」は「蜃気楼」

 ←白椿帖 →幸福もニンゲンも永遠の謎
s-DSCN4716.jpg




 「しあわせ」は「蜃気楼」


  メーテルリンクの「青い鳥」という作品は絵本にもなっているので子どものころに読んだ人も多い。

  貧しい家に育ったチルチルとミチルの兄妹は、幸福を招くという青い鳥を求めていろいろな国に旅に出かける。しかし、結局どこにいっても青い鳥を捕まえることができすに家に帰ってくる。二人は疲れ果てて眠り、夢から覚めると、なんと家で飼っていた薄汚れたハトが青い鳥になった。


s-DSCN4738.jpg



  もう一つの青い鳥

  メーテルリンクの青い鳥の絵本や童話集は子供向けのものであるため、最後には青い鳥が見つかったというハッピーエンドで終わっている。そして、青い鳥は身近なところにいたという話を「幸せは身近なところにある。だから、その身近にある日々の幸せを大切にしよう」という教訓的メッセージとして解釈するのが一般的だ。

  だが、メーテルリンクの青い鳥の原作ではその話に続きがある。もともとの原作は童話として書かれたものではなく、戯曲、つまり舞台用に書かれた。そして、原作では家にいた青い鳥も結局逃げてどこかへ行ってしまうところで話が終わる。

  この戯曲『青い鳥』の主題は「死と生命」を内に秘めている。人間が追い求める、うたかたの生命(即ち、幸運や幸福)も掴んだと思った瞬間に遠くへ飛び立ってしまう。どんな人にもかならず訪れる「生と死」の普遍的物語のことである。単なる幸福追求の童話劇では、1911年にノーベル文学賞を受賞することはできなかったであろう。

  この原作に対して、メーテルリンクの意図しているところに対してはさまざまな解釈が推測されるが、作家の五木寛之は著書「青い鳥のゆくえ」で面白い解釈をする。

  できあいの幸せ(青い鳥)なんてこの世にはない。幸せは簡単には手に入らない。でも人間には青い鳥(幸せ、希望)が必要だ。だからそれを作らなければいけない。

 人間は一つの幸せをつかむと、すぐに次の幸せを求めてしまう欲深い生き物。たまには自分の人生において本当の幸せとは何だろうかとじっくり考えてみるのもわるくはない。

 あの日、あの時、あの瞬間が「しあわせ」だったんだ、とわかるだろう。

 気が付いたときには、「しあわせ」はもうどこにもいない「蜃気楼」なのだ。


 
 
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 
もくじ  3kaku_s_L.png 愛娘 Erika
もくじ  3kaku_s_L.png やきもの
もくじ  3kaku_s_L.png 余白の人生
もくじ  3kaku_s_L.png 忘れえぬ光景
もくじ  3kaku_s_L.png 文学・芸術
もくじ  3kaku_s_L.png 雑学曼陀羅
もくじ  3kaku_s_L.png 時事評論
もくじ  3kaku_s_L.png 教育評論
もくじ  3kaku_s_L.png 書画・骨董

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【白椿帖】へ
  • 【幸福もニンゲンも永遠の謎】へ