文学・芸術

カミュ 『転落・追放と王国』

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zz カミユ 「転落・追放と王国」a




 カミュ 『転落・追放と王国』



zz カミユ 「転落・追放と王国」


 読者の感想


『転落』は本来、『追放と王国』の一編として書かれたらしい。これを分離したのは、正解だったように思う。その最たる理由は、『追放と王国』におけるプロットが、やや紋切型になっているのではないか、ということ。例えば「ヨナ」における画家とその環境の関係、「背教者」における正統と異端の関係は、本作の統一テーマである孤独と連帯よりも前面に出ているような印象を受けた。この視点からみると、『追放と王国』のなかで佳作なのは、「唖者」「生い出ずる石」「客」かなと思う。『転落』に関しては新旧約聖書との関連で再度考えてみたい。


ここまで読むのに苦戦した小説は久しぶりです。しつこいまでの人生語りからなる「転落」。善行や幸福に対する皮肉が一つ大きなテーマになっているのでしょうが、明確なプロットが無く思想書のような印象を受けました。面白かったのは「背教者」「追い出ずる石」あたり。文明と未開を素材にしながら前者による後者の従属化ではなく、その逆が描かれています。ストライキの失敗、そして戻って来る日々の生活と倦怠感を醸す「唖者」も、筋書きとしては地味ではあるものの、行き詰った空気感が好きです。


zz カミユ 「転落・追放と王国」b


虚無感と不条理。そしてニヒリズム。ああカミュだ。『転落』で描かれるクラマンスの人生。社会的規範、善いとされる道徳と共に生き、それに疑問を抱き真に誠実に生きる為に社会と決別し堕ちるところまで堕ちて行き、最期に縋ったのは信仰。そして己が適応出来なかった社会から断罪され苦しみに満ちた生を終わらせることを望む。不条理に充ち満ちた世界から解放されるには死ぬしかないし、それが訪れる刹那の瞬間にだけきっと僕たちは安堵できる。夏に向けて生命力が増してくるようなこんな季節にこそ逆に読みたくなる小説。


『転落』価値観の軸が壊れて世界の見え方が変わった人の話。結局、人間を個人たらしめるのは、自尊心なのかな、と思った。『客』アラビア人は自ら牢獄を目指した。教師は誤解され、孤独を感じる。『ヨナ』芸術家が他人に囲まれ、個人を失い続ける話。個人の生活を奪われることは、最後には人格を奪われることにまで、繋がる。人間は「孤独」なのに「連帯」している。個人はどこにいるのか? 短編集全体として、「孤独」と「連帯」がテーマだった気がする。追放されたものは、個人になるか。「連帯」しているのに、私たちは「孤独」だ。




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