文学・芸術

銅版画 Giovanni Battista Piranesi

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zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranes 繊細な描線は、現実の光景を描いても非現実的な趣がミックスされていた
繊細な描線は、現実の光景を描いても非現実的な趣がミックスされていた




 銅版画 Giovanni Battista Piranesi


廃墟と幻想を愛した芸術家『ピラネージ』「廃墟画家」の異名もとる人物

狂気的な創造力で、悪夢のような幻想世界を描いた芸術家『ピラネージ』


zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranesi
美は、ここにおいては、心安らぐ、きれいなものではなく、むしろ畏怖の念を抱く、曖昧な二律背反の美として提示されている。



石工の息子としてヴェネツィアの北20キロにあるモリアーノに生まれる。母方の叔父で建築家のマッテオ・ルッケージのもとで、透視図法と舞台装飾を学ぶ。

建築家として実現した建物は数少ないが、1000点以上もの幻想的な銅版画を残した事で知られている。

ピラネージの「想像力と創造力」は、主にローマの古代遺跡や都市景観を版画に描いた。
特徴的な細密で緻密な作品は、その後の新古典主義建築の展開にも大きな影響を与えた。

同じローマの風景であっても,凡庸な画家による同じ場所の風景がピラネージの手にかかるとまったく違った魅力あるものに変貌する。


zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranes 繊細な描線は、現実の光景を描いても非現実的な趣がミックスされていたa


それは、それまでの神話的に美化され、明るく澄み渡り均衡の取れた古代遺跡の風景ではなかった。

現実にあったであろう在りし日のローマの姿と、崩れ去り草木が覆うローマの姿がともに印象に残り、人が構築したものの哀しさを感じる。

どこか暗く、退廃的な雰囲気を漂わせ崩壊していく世界が描かれた。

美は、ここにおいては、心安らぐ、きれいなものではなく、むしろ畏怖の念を抱く、曖昧な二律背反の美として提示されている。

廃墟=解剖された屍体、廃墟画=解剖図という見方は興味深い。剥落した壁と皮膚を剥がされた人体は類似してるかもしれない。

崩壊して失われた部分を再構築しながら、架空の古代の様子を復元して描いた物が多い。


zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranesi 美しき悪趣味。廃墟と幻想を愛した芸術家『ピラネージ』


 ピラネージ(Giovanni Battista Piranesi 1720-1778)


イタリアの版画家、考古学者、建築家。というと、反射的に”ローマの街や廃墟”が頭に浮かぶ。

ピラネージのローマ風景や廃墟の版画は実に印象的。一度見たら、忘れられない。彼の作品は、本来は無機質な建築や普通の景色なのに、なぜあんなにも情緒豊かに感じるのだろう? その理由が今回の展覧会で掴めたように思った。

ヴェネチア生まれ、叔父から古い建築を学んでいた彼は、20歳の時ヴェネチア大使の教皇訪問に画工として随行し、初めてローマを訪れる。彼は完全にローマに魅せられてしまった。

当時も既に、海外から多くの芸術家や裕福な観光客が訪れており、記念としてローマ景観の版画が売れていたのだそうだ。あまり裕福でなかった彼は、興味と実益を兼ねるため、銅版画の技法を学ぶ。これが版画家ピラネージの誕生だった。


zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranesi ピラネージの作品は、その時代においてかなり特異な存在であった
ピラネージの作品は、その時代においてかなり特異な存在であった


彼はとても神経質なひとだったらしい。それは線を見ても分かる。レンブラントの版画とは全く異なるタイプの線で、とても繊細で美しい。バランスの悪いものとか、曲線ばかりの作品は彼にとっては有り得ない存在のようだ。建築家と自称するだけあって細かな箇所も正確に表現し、直線的建造物の中に、ローマ時代の芸術を曲線の集まりのようにちりばめ、装飾が豊かになっている。

彼の版画集「ローマの古代遺跡」や「ローマの景観」は当時の海外の多くの人を魅了したそうだ。上の版画は、「古代のマルスの競技場」。その周りにあふれんばかりの美しく装飾された壊れた彫像や石棺、壷、塔・・・。実際にこのようなものは無いのに、彼の想像でロマン溢れる作品に仕上がっている。どれだけ多くの人が彼の版画を見て、実際にローマを見たいと思ったことだろう・・・ゲーテもその一人だったらしい。


zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranesi 神話的に美化され、明るく澄み渡り均衡の取れた古代遺跡の風景ではなかった
神話的に美化され、明るく澄み渡り均衡の取れた古代遺跡の風景ではなかった


建築家なので、街を客観的に描いているのかと思えばそうではなくて、パンフレットの絵の川のように、これは「ティボリの滝」なのだが、実際にはそんなに大きくないのに川幅を大きく取り、豊富な水を流れさせ、川の豊かさを強調している。

右のピラミッドも同じ、中央下方にいる小さい人物と比べると、とても大きく見える。ところがこの版画の隣に掛かっていた写真をみると、そんなに大きくはない。そのあまりの差に、この版画うそ!と思った程(ゲーテもそう思ったとか)。でも、版画の中ではあまりにも大きいので、強烈な印象を受ける。

さらにピラミッドがローマにあるとは知らなかったので、その点についても驚いた。帰宅後急いで探したら、南に向かう地下鉄で、コロッセオから2つ先に”ピラミド”という駅があり、そこがこの絵の「サン・パオロ門」だと分かった。次回ローマへ行ったら、ぜひとも見に行こう!私もピラネージの版画に刺激されてしまったようだ。


zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranesi 崩れ去り草木が覆うローマの姿がともに印象に残り、人が構築したものの哀しさを感じる
崩れ去り草木が覆うローマの姿がともに印象に残り、人が構築したものの哀しさを感じる


見事な古代ローマの建造物に、くっきりとした割れ目や崩れた箇所を詳細に描き出し、さらに至る所に大小の雑草を生やし、回りには瓦礫を散らばらせたりしているのを見ると、時間的距離感を私達に与えていて、これが私達の情緒を揺さぶる。繊細にして雄大な彼の版画!彼は様々な技巧を用いて作品を魅力的なものにしていたのだ。

上は、「ローマの景観」の「扉絵」と呼ばれる版画集の最初のページにあたるもの。碑文のような場所には、”VEDUTE DI ROMA DISEGNATE ED INCISE DA GIAMBATTISTA PIRANESI ARCHITETTO VENEZIANO”(ヴェネチア人の建築家ジャンバティスタ・ピラネージによってデザインされ彫られたローマの景観)と書かれている。

このように古代遺跡を思わせる石版にタイトルを描くのは、彼の常套手段だったのだそうだ。また彼は、建築家としては机上だけで、実際の仕事はしていないにもかかわらず、彼は必ず自分を名前の後に”ヴェネチア人の建築家”と主張しているところに彼のプライドを感じる。


zz dp銅版画 Giovanni Battista Piranesi 暗く、退廃的な雰囲気を漂わせ崩壊していく世界
暗く、退廃的な雰囲気を漂わせ崩壊していく世界


版画の中で彼が建築家だと実感したのは、緻密な図面だけではなく、「牢獄」シリーズの版画もだった。前述の線とはまったく違う荒々しい線の集まりで、これが同じ作者の作品なのかと驚いた。恐ろしいほどの空間に不気味に存在する巨大な装置、そしてどのように繋がっているのか分からない階段の数々・・・衝撃的な作品群だった。

芭蕉は”夢は枯野を駆け巡る”と言ったけれど、ピラネージは、”夢は古代ローマを駆け巡る”といった具合だ。彼の古代ローマへの憧れが染み込んでいる版画は、当時の人のみならず、現代人をも魅了する。



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