余白の人生

ゆたかな恋愛の適齢期

 ←創造は模倣から 「禁じ手」礼讃 →平櫛田中(ひらくし でんちゅう)
zzr 花:射干玉・雄山火口・山香ばし 器:李朝石器
花:射干玉・雄山火口・山香ばし 器:李朝石器・手あぶり 青春・朱夏・白秋・玄冬の中の白秋の雰囲気がたのしい。




 こころの豊かさと恋愛


 恋愛というものは、たいてい、人生の初期の段階、すなわち若いときに体験することが普通であろう。

 生物学的にいえば、恋愛は性欲の産物であり、少なくても性欲が推進力になっている。したがって、肉体が若くなくなり、性ホルモンの分泌が減ると、恋愛への関心もしだいに少なくなってくるといわれる。

 しかし、人間は犬や猿などの動物ではなく、それよりずっと精神的な存在であるから、恋愛のすべてが性欲の産物であるわけではない。そうだとしたら、恋愛相手は、生殖能力にすぐれた異性ならだれでもいいことになってしまう。しかし実際は、それほど単純ではない。恋愛はきわめて精神的な営みでもある。

 したがって、心が貧しければ、貧しい恋愛しかできず、そういう場合は、ほとんど動物の「さかり」と同じようなものとなるだろう。

 そのため、まだ人生経験が浅く、精神的な豊かさという点ではまだこれからという若者が、豊かな恋愛をすることは、とても難しいように思われる。

 個人差はあるが、だいたい心の豊かさというのは、五十歳くらいになってから、早くても四十歳を過ぎてからでないと、手に入れられないように思う。それまでは、心の豊かさといっても、本で読んだり、人から聞いたことをそのまま受け売りしているような感じで、自らの体験に根ざしていないことが多い。

 しかし人間というものは、いろいろな経験を積んで、思索を深め、人生の酸いも甘いも味わうことによって、心の豊かさを持つようになる。その年齢は、やはり五十歳くらいになってから、人によっては六十歳になってからではないだろうか。

 そのときには、異性に対するものの見方や感じ方も、若者とは違うものとなる。何よりも、異性に対する敬愛といたわりの気持ちが強く出るようになる。単に相手から快感を求めるだけではない、異性に対する無私の愛といったものも出てくる。

 異性をおおらかに見守り、育ててあげようという、ゆとりをもった気持ち、異性が自分に対してしてくれる、どんなささいなことに対しても捧げられる感謝の気持ちが、まるで花の香りのように、自然と放たれるようになる。

 若いときは、相手を両手で抱いて、その背中に手を回すだけだったものが、その年代になる頃には、片手で女性を抱きながら、もう一方の手で髪をやさしく撫でることができるようにもなる。限りない慈しみに満ちた情愛をもって、ゆっくりと髪を愛でながら、同時に、髪を愛撫されているパートナーの気持ちを自らの感触として感じることも、できるようになる。

 相手の美しさと魅力を味わう喜びとともに、相手の抱える苦悩や悲しみをも、自分の中に同化し、それを共有する喜びをもつようになる。

 このような、いわば懐の深い年代になったときにこそ、男性も女性も、真の意味で異性を愛することの本当の意味を理解できるようになる。そして、それこそが恋愛の真髄であり、恋愛のもっとも深い喜びではないだろうか。残念ながらこの喜びは、若者には味わうことができない。


春 木蓮


 もしも私が創造主だったら、人間は老人としてこの世に生まれ、歳とともにどんどん若くなって、最後は赤ちゃんになって、健やかに眠るように死んでいくように創造するだろう。

 そして、五十年か六十年くらい生きて豊かな精神性を身につけ、肉体年齢としては二十歳くらいの若さになったとき、初めて恋をするように創造するだろう。

 そうすれば、人生のもっとも熱いクライマックスを、晩年に設定することができる。恋愛ほど、人と人とが距離をゼロにし、壁を取り払って一体感を味わえるものは、少なくても地上には存在しない。精神的な条件さえ整っていれば、それは人生におけるもっともドラマチックで、もっとも魂を揺さぶる体験となるだろう。

 そのようなすばらしい愛の体験が、最期の方で待っていると思えば、人生がいかに辛くても、人は希望をもって生き続けることができるに違いないと思うのだが。




スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 
もくじ  3kaku_s_L.png 愛娘 Erika
もくじ  3kaku_s_L.png やきもの
もくじ  3kaku_s_L.png 余白の人生
もくじ  3kaku_s_L.png 忘れえぬ光景
もくじ  3kaku_s_L.png 文学・芸術
もくじ  3kaku_s_L.png 雑学曼陀羅
もくじ  3kaku_s_L.png 時事評論
もくじ  3kaku_s_L.png 教育評論
もくじ  3kaku_s_L.png 書画・骨董

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【創造は模倣から 「禁じ手」礼讃】へ
  • 【平櫛田中(ひらくし でんちゅう)】へ