時事評論
ガン治療に有効な最先端治療法
ガン治療に有効な最先端治療法
水素ガス吸入療法
慶應義塾大学病院
実施診療科 救急科
承認年月日 平成28年12月1日 (厚労省認可)
2016年11月30日に、「水素ガス吸入」が厚生労働省の先進医療Bとして認可された
適応症
心停止後症候群(院外における心停止後に院外又は救急外来において自己心拍が再開し、かつ、心原性心停止が推定されるものに限る。)
先進性
水素吸入療法は水素ガスを酸素とともに吸っていただく画期的な治療法です。これは全世界で初めての治療法です。 これまで、水素ガスは様々な病気や病状に対して効果のあることが動物実験で示されてきました。しかし、ヒトに対して、本当に効果があるか否か、これまで全く試されてきませんでした。また、水素ガスは酸素ガスと反応して爆発する危険があることは広く知られていますが、その危険のない範囲で用いることができるようになりました。
今回の水素吸入療法が確立されれば、様々な場面で水素吸入を行うことができるようになります。水素吸入自体には、大掛かりな装置は不要ですので、簡便で効果的な治療が行うことができます。大きな病院以外でも、大きな医療機器がなくても施行可能な画期的な治療なのです。
概要
今回、水素吸入療法を行うのは、心停止後症候群と言われる状態を対象にしています。心停止後症候群とは、病院の外で、突然に心停止(心室細動と呼ばれるような不整脈が突然発生することによっておこります)になり、救急蘇生術によって心臓の鼓動が再開したけれども、脳をはじめとした臓器の機能が損なわれた状態です。心停止後症候群になると、一部は、完全に回復して後遺症をほとんど残さずに社会復帰を果たされますが、高度の障害が残って、寝たきりの状態や、いわゆる植物状態のような状態になられることがあります。これに対して、従来、低体温療法(現在は体温管理療法と呼んでいます)と呼ばれる集中治療を行って、脳のダメージを最小限に食い止める努力を行ってきましたが、それにも限界がありました。 今回の水素吸入療法は、この体温管理療法に加えて、水素ガスを酸素に加えて吸入していただくものです。爆発の危険のない、2%水素を18時間だけ吸っていただきます。心停止後症候群の社会復帰がさらに増えることを期待しています。
なお、水素吸入療法は、まだ確立された治療法ではありません。この先進医療技術は、水素吸入療法が有効か否かを確かめるために行われます。
効果
水素ガスは体内で様々な有害物質を無毒化できるのではないかと期待されています。今回の心停止後症候群では、主に脳の機能に焦点を当てて、心停止になった時の脳の酸素不足のダメージを水素によって軽減しようとするものです。これによって、心停止後症候群から回復して社会復帰を果たす方が増えることを期待しています。 また、水素吸入療法は世界初の治療法です。この技術が確立されれば、心停止後症候群以外の病状にも応用が容易になります。水素吸入自体には、大掛かりな装置は不要ですので、簡便に効果的な治療が行えるようになります。まさに画期的な治療です。
水素医療、大きく一歩前進
心停止後の水素吸入療法が厚生労働省の先進医療Bとして承認
2016年12月20日
水素吸入治療法が厚生労働省の先進医療Bとして、2016年11月30日に承認されました。心肺停止後の蘇生後に患者に水素ガスを吸入させ、生命を護り、さらに脳機能を護ることで、社会復帰をめざす革新的な治療法です。
先進医療とは、先進医療技術審査部会によって、有効性・安全性・必要性などが厳しく審査され承認されるものです。特に、先進医療Bは、先進医療Aよりも厳しく審査され、「医療技術の安全性、有効性等に鑑み、その実施に係り、実施環境、技術の効果等について特に重点的な観察・評価を要するものと判断されるもの」です。
先進医療は、将来的に健康保険適用の医薬品として承認されることを前提として開発段階の治療が行われるもので、水素が医薬品として認可され、実際の医療に使われる道が大きく広げられました。また、先進医療の段階でも、水素吸入以外は健康保険を使う事が可能になります。
水素ガス濃度は、安全な2%を使用し、20医療施設、360人の患者を対象とする予定で、本格的な医療研究となります。
水素医学は、一歩一歩着実に前進しています。関係者の御努力に最大限の敬意を表したいと思います。
By Shigeo Ohta (太田成男)
1979年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了
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